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• 細川忠興軍功記
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1. 天正十年春信長様御代大阪之御城御本丸ハ丹羽五郎左衛門長秀殿御預り千貫矢倉ハ織田 七兵衛殿に御預け被成下置候由之事

1. 四国御手に入不申に付御人数被遺候御名代織田三七信孝様丹羽五郎左衛門殿被成御添可被遺と被仰出御陣御用意被成候事

1. 備中高松之城主清水長左衛門宗治も信長様へ従不申に付秀吉公へ被仰付御打果可被成と て秀吉公高松へ御人数被召連被成御越候城のかけり沼にて御座候故水攻に可被成とて阿 部川迄樋三里程大堤御築被成水留申候内に毛利輝元殿大軍にて後巻に出被申候秀吉公無 勢にて御座候に付御加勢被仰請候然ハ明智日向守光秀殿筒井順慶并忠興様此三人迄可被 遺と被仰出候何も*

1. 信長様御父子共に御上洛被成信長様ハ本能寺に御座候信忠様ハ二條之御屋敷に御座候事

1. 天正十午の年六月二日光秀公備中出陣之可有御暇乞とて六月朔日の夜半計に丹波之亀山 迄被成御立候次て御人数可懸御目とて堅木原に御人数立申候か明智左馬之助光遠人数京 へ俄に出し申候残人数も押寄無程本能寺に攻懸り申候二日之朝五ツ時分御殿に火をかけ信 長様被遊御自害候信忠様ハ二條之御屋敷に御座候を追信忠様御切腹被成候事

1. 光秀公ハ具足乍召御参内被成扨洛中之地子被成御免高札御立被成候事

1. 忠興様ハ六月三日に備中へ御出陣被成候に付丹後宮津御居城之外に犬堂と申所迄御人数 押出し御出相待申候處に愛宕下坊より飛脚泥足にて御廣間へ走り上り文笈指出申候を取次 上け申候忠興様早御法體被遊御出被成信長様御父子共に御腹被為召候注進に候御人数 打入可申迄被成御意候に付御人数引入申候事

1. 光秀公より沼田権佐御使に被遣忠興様御人数被召連急き御上り被成候様にと被仰進候御返 事此度ハ助被帰候重て参候はゝ御誅伐可被成候迄承届帰申候

1. 三七様五郎左衛門殿四国へ六月二日に可有渡海とて住吉浦にて馬印も船に立申候處に信 長様御切腹被遊候注進到来申に付其儘大阪へ御帰被成御本丸ハ三七様五郎左衛門殿御座 被成候七兵衛殿ハ初より千貫矢倉に御座候事

1. 備中高松水高く上り城中可仕様無御座候に付清水申候は諸人御助被成候ハゝ清水罷出腹可 仕と御詫言申候然ハ申通に可被仰付と御返事被成候扨明る五ッ時分に腹仕に相極申候 然る所に信長様御腹被為召候注進六月六日七ッ時分に参着仕候を御隠し被成候て明る五ッ 時分清水筏に乗罷出筏之上にて切腹仕候則其日備中より御上被成御吊（弔）合戦可被成と て道中御急き候由申傳へ候事

1. 光秀公ハ三七様五郎左衛門殿御打果可被成候間筒井順慶に人数出し候得は洞か峠にて御 待合可被成と被仰遺候得ハ則人数出し可申と申に付中一日二夜洞か峠に野陣被成筒井御 待被成候事

1. 三七様五郎左衛門殿被仰合御吊（弔）合戦可被成候間七兵衛殿先手被成候得と被仰遺得其 意申候兄三七様御人数御出被成候ハゝ御跡より人数東土場へ出申候然ハ七兵衛殿色か立 御本丸方かこひ被申體に相見へ申候に付五郎左衛門殿御本丸より千貫矢倉へ鉄砲稠敷打 掛被申候下々わきこほれ申候を三七様御手にて数多御打取被成候故無程七兵衛殿も切腹ひ 成候事

1. 摂津国に被召置候池田三左衛門輝政殿中川殿高山右近重友殿其外之侍衆山崎へ詰籠秀吉 公御上着待申候事

1. 光秀公筒井御待被成洞ヶ峠に御座候處大阪より七兵衛殿切腹被成候又秀吉公ハ備中より御 上り被成候早兵庫迄御着之由之注進被聞召候に付其儘洞ヶ峠御引取被成候て狐川を渡り山 崎表へ御人数御集被成先手ハ山崎へ被押向御旗本ハ穏坊塚に御人数御立被成候由之事

1. 山崎に被居候衆天王山迄山崎へ取可申候的に被取候てハ悪敷候とて寶閉寺より天王山へ 人数あかり申候光秀公よりハ阿辻萬五郎百挺之鉄砲召連天王山を取可申候とて山八分目 程上り申候に付萬五郎鉄砲之者ゑらみ申候其内に秀吉公山崎近辺迄御着被成候注進被是 疑申候て山崎之内より人数出申候一番合戦ハ高山仕敵突崩申候故残衆惣掛り被仕候得ハ 其儘敗軍に罷成光秀公ハ勝龍寺へ御引籠被成候其夜之未明に光秀公勝龍寺を被成御立坂 本へ御入可被成と思召御通被成候を秀吉公御人数見付詰懸申に付無是非山崎にて被遊御 自害候事

1. 信長様御葬禮蓮臺野にて被成候互に御気遺にて御警固之儀式抜身共にて特々敷相見申候 由之事

1. 尾州清州へ秀吉公柴田修理亮勝家殿御参会之上御国割を被成筈に付織田三七様も岐阜よ り清州へ被成御出秀吉公丹羽五郎左衛門殿池田勝入此御衆も前廣より御出候て柴田殿御 待候由之事

1. 柴田殿清洲へ御著之日限相聞へ申日植原次郎右衛門広間へ常眞様三七様秀吉公五郎左衛 門殿池田勝入御出被成候間柴田殿被参候を御待候広間之庭に信長様城之助様御待衆大小 共に八百計詰込被居候由之事右同

1. 柴田殿塀重門より入被申候供之侍三百計御座候柴田殿縁に上り角柱にもたれ被居候柱之 之下に柴田殿三人の甥共詰懸居申由之事

1. 常眞様三七様ハ御座敷之間之内に御座候秀吉公は前かとより縁輪に御座候池田殿五郎左 衛門殿ハ前廣より御座之間に御詰被成候事右同

1. 秀吉公勝家へ被仰候は修理殿御出待御国割可仕と存候得共遅り御出に付御両人様急御国 割仕候得と被仰候常眞様は尾州北伊勢を加へ進上申候と被仰候に付御望之如進上仕候三 七様ハ濃州に南近江をくはへ進上申様にと被仰候如御望に進上仕候と被仰候得は我に談合 なしに国割たてをいてくれい其つれするならハ頭辺迄押てくれうと勝家被申候秀吉公返答ハ 我か頭辺押事成間敷候上の御吊（弔）合戦ハ我か仕候笑敷事申と被仰候其儘池田殿五郎左 衛門殿中間へ御入被成候御兄弟様も御立寄被成被仰候ハ両人之衆魚と水の様に有之候て こそハ兄弟の為に候左様之仕合無體と被仰候其時池田殿丹羽殿はひはら急御杯出し候へと 被仰せ盃出申候雙方之盃御取替し被成静り申候由之事右同

1. 三七様秀吉公へ被仰候ハ明日は修理も国下可被申候其方も長濱へ帰可被申候然ハ岐阜に て風呂を可被仰付候立寄可被申候と被仰候秀吉公明る未明に清洲御立被成洲股へ馬上御 壹人にて御著被成洲の股の御代官佐脇作左衛門親類仕候則秀吉公御立寄被成湯漬をあか り馬より亭主の馬に御乗被成夫より鈴鹿を左になし水口を御通り被成其日ハ八幡山へ御出に て其夜船にて長濱へ御着被成柴田殿御帰御待請被成候由之事

1. 柴田殿は岐阜にて於市さまと御祝言被相調越前へ御同道被成長濱御通可有處長濱之仕形を 被聞召付伊吹山の東表にへり道御座候を漸御通候て越前北之庄へ下着被仕候是より秀吉公 と勝家と御間悪敷色か立申し候事

1. 筒井順慶ハ大和伊賀両国従信長様被為拝領候其後秀吉公より大和国被召上御舎弟羽柴美 濃守秀長殿へ被遺伊賀国計順慶に被拝領候伊賀も美濃守殿御旗下之由に御座候事

1. 三七様と柴田殿瀧川左近将監一益殿御三人御同意之由申傳へ候事

1. 常眞様と三七様御間も無程悪敷罷成申候故常眞様と秀吉公被仰合三七様御打果被成御談 合相極り申之由事

1. 岐阜へ御仕掛被成候ハゞ柴田殿岐阜後巻可被出と思召江州志津か嶽に地蔵山と申所を當座 之城に御こしらへ候て御舎弟美濃守殿対象に被成筒井伊賀守中川瀬兵衛高山右近なと御加 え被成被召置候由之事

1. 常眞様秀吉公岐阜へ御押詰被成候處に柴田殿越前より人数召連志津ヶ嶽へ出被申候先手 ハ柴田殿玄蕃盛政壹萬計置残る人数ハ中川瀬兵衛陣取に押懸朝之四ッ時分に瀬兵衛攻果 被申候事

1. 右之注進岐阜へ其日七ッ時分に着仕候岐阜ハ常眞様御渡候て秀吉公其日之不入内に十三 里を御懸付成日暮に地蔵山之走り矢倉へ御あかりにて敵ハ何と陣取候やと被成御尋候 向に火を見え申候も敵にて御座候柴田殿本陣は従是見へ不申候又海はたに火の多く見へ 候ハ瀬兵衛陣取たる所にて御座候をもみ落則玄蕃陣取申候と何も被申候得はずつとすみ候 明日ハ皆々ひろひ首を御取せ候半と其子細は大番袋に物を入口を志めたる心にて柴田も物 仕にて候間今夜是へ御懸付被成候を聞可申候然ハ夜内に引取可申候御付候ハヾ負軍可仕 候間鳥がうたひ候て皆々拵可申と被仰候あんのことく鳥うたひ時分より玄蕃陣取さわぎ申に 付御味方彌競早夜の内に首を取申候明て度々せり合御座候て破軍に成申候是伊藤金左衛 門咄申候事

1. 柴田殿ハ北庄へ御引取被成候明日四ッ時分に秀吉公北の庄へ御押詰被成柴田殿ハ其日殿 主に火をかけ御自害被成候由申傳へ候事

1. 秀吉公越前御仕廻被成岐阜へ御帰陣被成頓て御あつかひに罷成三七様岐阜之御城被成御 渡伊勢へ船にて御座候様に被成度と被仰候に付船にて伊勢へ送り申體にて野間之内海の 浦へ船を着内海にて御切腹被成候事

1. 瀧川殿ハ従信長様伊勢に被召置候城三ヶ所御座候一ヶ所ハ松坂一ヶ所ハ神戸壹ヶ所は亀 山と申傳候秀吉公御出馬先亀山の城御攻被成候御家中之御人数も亀山を攻申候城中より 突て出申時諸勢さわき申候處米田助右衛門殿立所不去御働見事に見へ申に付秀吉公御使 番衆被遣御褒美被成候由承及候事

1. 瀧川殿城三ヶ所共に秀吉公御攻取被成扨左近殿は高野の住居仕度御詫言被申候得共無御 同心切腹被仰付候事

1. 志津ヶ嶽御陣之時忠興様ハ船手にて越前へ御働被成越前の由良之湊にてせり合御座候日 杉少助なとも鑓仕候由申候事

1. 志津ヶ嶽にて中川瀬兵衛殿打死被成候を秀吉公方御負候様に一色殿御聞被成候て宮津之 御留守を御取候半と武者船を大童沖迄押出し被申候跡より雑説之由申船に追付留申に付ゆ みの木へ舟押戻し被申候然共色々顕申に付忠興様御帰陣之御祝儀へも出不申引籠被申に 付幽齋様御拵みて宮津へ御出仕被成筈に相極申候事

1. 一色殿御打果被成候御座敷八畳敷にて御座候其間に一色殿同家老日置主殿介忠興様御三 人一色殿と忠興様向合にて御座候主殿介忠興様右の脇に居申候御腰之物左之勝手口より 中島甚允持出申候か柄の勝手悪敷置申候故少被成にくき體米田宗堅見付御肴持参被申御 腰物にさはり被申候を取直し被成御勝手能様に御直しにて扨追取御抜き被成候一色殿も脇 指抜合被申候得共早御切付被成主殿方へ御向候得ハ主殿逃申候一色殿は供之侍両人引立 屋敷之外迄退被申候かたうとたほれ被申候時二に成果被申候事

1. ゆみの木の城へハ御舎弟玄蕃殿松井殿米田殿其外御馬廻衆被仰付候城中より申候ハ皆共 ハ御打果被成候ハヾ一色殿御内儀生害仕其後皆共腹可仕候御助被成候ハヾ御内儀様無事 渡可被申と申に付何も御助被成に付極り城御請取被成候事

1. 米田助右衛門殿ハ宮津無心元被存鈴峠を西より上り被申候眞下梶助ハ宮津を切抜けゆみの木を仕舞可申候心懸東より上り申候か峠にて助右衛門殿に渡合相果申候最後之有様を先年 会津表へ御下り之時三斎様へ助右衛門殿御咄被申候を承申候事 文禄四年七月中旬に 摂政関白秀次公御身體果申次第

1. 前野但馬守長泰殿則但馬国守木村常陸向井（白カ）備後（敦賀）石河（明石左近）伊豆（明則）羽根 長門守此衆へ秀吉（次カ）公被仰候ハ何事にても被仰付儀意儀申間敷を書物被取置候由石田 治部少聞付太閤様へ申上候に付秀次公御使にて様體被仰遺候秀次公大に驚聚楽より伏見へ 御出有御理る色々被仰候得共御合點不参に付伏見より高野へ御入候扨福島左衛門太夫正 則殿検使に被遺秀次公御切腹被成候彼書物之御衆も不残切腹被仰付候中にも前野但馬守 殿父子ハ中村式部少殿預り被申候駿河府中にて但馬守殿御息出雲守殿御切腹被成候事

1. 忠興様右之書物不被成候得共秀次公別て御懇に御座候不何和（知カ）黄金百枚被為拝領候 其上前野但馬殿御息出雲殿ハ忠興様之婿殿にて御座候に付御縁者故御一味被成候と治部 少申立によりて無是非思召聚楽之御屋敷へハ米田助右衛門殿被遺伏見よりの一左右次第に 御上様御子様達御仕舞候て御屋敷へ火を懸助右衛門殿切腹に儀定仕候由忠興様御意被成 候事

1. 黄金百枚之儀ハ薬院法印肝煎にて秀吉公へ借用被成候拝領にてハ無御座との被仰分米田 助右衛門徳善院太閤様へ被申上候得ハ被仰出候者先年明智謀反之時信長公之御恩存出明 智一味不仕候段此度秀次公と一味仕候共對其時之忠節に可有御赦免と御諚之旨徳善院被 仰渡忠興様御安堵被成候此度も助右衛門殿一命御奉公之由忠興様へ度々御咄承申候事 寛文九年　　牧　丞太夫傳

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